さよならマル
かつてひとり暮らしを始めた娘の良き話し相手であり、そろって我が家に戻ってからは山田家の家族の一員だったデグーねずみの「マル」が死んでしまった。
その日もいつもと同じく回し車で遊んだり、短く折って与えたスパゲティを手に持って食べたりしていたのだが、夕刻、階下より仕事帰りの娘の「マルーマルー」という悲痛な声。
降りてみればマルはぐったりとして動かない。
娘が抱いて直ぐに近くの動物病院へ行ったところ、熱中症と診断された。
心拍を上げる薬と一日分の水分の注射を打ってもらい帰宅したが、熱中症としては一番容体が悪い状態で、恐らく明日の朝までは持たないということ。ただ、もしも明日病院が開く時間まで生きていたらすぐに連れて来るように言われた。
翌朝は娘が仕事だったため、私が病院へ連れて行くことにした。
夜、娘は布団をリビングに敷いてマルを入れたプラスティックケースを枕元に置いて、遅くまでマルに声をかけたり心配そうに様子をうかがっていた。
翌朝、6時頃に目が覚めて下へ降りると早出の娘が出勤の準備をしていた。
「パパ、マル元気になったで!」
見るとマルは本当にいつもの元気を取り戻したようだった。しっかり立って鼻をクンクンさせて用意する娘を見ていた。
「良かった、じゃぁ8時半に病院へ連れていくわ」と娘に言って寝室に戻った。
開院の時間が来たので階下へ降りると、マルはもう冷たくなって動かなかった。呼んだりさすったりしたけど、開いたままの眼を閉じることもなかった。
ついさっきまでは元気を取り戻してたのに・・・
きっと一晩娘の傍にいれたのが嬉しくて、娘が離れるまでは頑張ったんやね。
ネズミは犬や猫のように人に慣れる動物ではないけれど、その朝の出来事は明らかにマルの意思の力だったような気がした。
マルが気になって”どうだった?”ってメールが来るに決まってたから、その場で娘にはメールを送った。
”体をまるめてあげて、首もとに保冷剤おいてあげて”と返事がきた。
その日は仕事中に涙がこぼれて仕方なかったと言っていた。
今こうして書いていてもじわーっと目が潤んでくる。ペットってやっぱ普通に家族なんだと思います。
願わくば解き放たれたマルの魂が夏空を元気に駆け回っていますように。
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